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「催淫剤だよ。体に入れたら、ちょっと感覚が鋭くなるくらいだし、軽いやつだから三~四時間で効き目は切れる」
「さっ、催淫……って、渉ちゃん! もしかしてこの可愛らしい男の子と……っ!?」
息子の素行にショックを受けた山下父が真っ青になる。
「君、まだ高校生くらいですよね」
「はい。桜が丘の……三年です」
「ああ……よりによってうちの生徒だなんて! 渉ちゃん! あなたいい歳して何を考えてるの!」
「パパ……ごめんなさ…………ふぐっ」
父親なのか母親なのかわからない状態になっている山下父から力一杯頭を殴られ、山下はうめき声を上げて床に倒れ伏した。
山下は父親から殴られて気を失ったらしく、フローリングの床の上でうつ伏せになったままピクリとも動かない。
「しかたないです。松本くんは薬の効き目が切れるまで安静にしておくしかないようですね……って、久志さん! 何やってるんですかっ!」
これでは逃げる心配はないだろうと、夏樹の方へと視線を移した芹澤が目を瞠った。
「何をって、いつまでも下着一枚のままだと夏樹が可哀想じゃないか」
「だからって何故それなんですか!」
「夏樹が着れそうなものがこれしかなかったんだ」
久志はそう言うと、茶色い着ぐるみに身を包んだ夏樹のことをぎゅっと抱きしめた。
「ふっ……ん」
「すまない、苦しかったか?」
抱きしめた拍子に夏樹から苦しげな声が漏れる。
あわてて腕の力を緩めた久志が夏樹の顔を覗き込んだ。
「大丈夫……です……」
胸元で顔を上げた夏樹と目が合った久志が息を飲んだ。
薬の効き目が出てきたのだろう、頬がほんのりとバラ色に染まっている。僅かに伏せられた瞳は涙で潤み、薄く開いた唇からは吐息混じりの熱い息が漏れ出ていた。
「な、夏樹」
完全にスイッチの入った久志が夏樹のことをベッドに押し倒した。
「――――んあっ」
「夏樹、私の可愛い子リスさ…………んっ」
「はい、久志さん。そこまでです」
芹澤が久志の後ろ襟を掴んで夏樹から引き剥がす。
「芹澤!」
「久志さん、落ち着いてください。ここをどこだと思ってるんですか。それに、まず松本くんを休ませてあげないと。あ、君、理央くんでしたっけ、ちょっとこの人を運び出すのを手伝ってください」
「芹澤……っ、お前が本当はやたらと強いんだって山路にバラすぞ……っ」
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