970人が本棚に入れています
本棚に追加
「芹澤」
「はい、なんでしょう?」
「――子猫を一匹用意しろ」
「は?」
芹澤が背後にいる久志の方を振り向く。
久志は芹澤と目が合うと、ふいと目を反らし横を向いてしまった。
「……なっ、何だよ」
「いいえ、別に。子猫ですね……ええと、なっちゃん? どんな猫が好きですか?」
「しろくて、ふわふわしたの!」
「分かりました。じゃあ、私と一緒に見に行きましょう」
「――え? 俺は?」
子供と手をつないで出ていこうとする芹澤を久志が慌てて引き留めた。
「そうでした。久志さんはすぐに戻ってください、奥様が探していました。お客さまがお待ちです」
「何で? 父さんは?」
「聞いてないんですか? お見合いですよ、久志さんの」
「はあ!?」
そう言って、芹澤は呆然としている久志に軽く頭を下げると、今度こそ子供と一緒に出ていってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!