23 俺の意思じゃないですから!

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(消えてしまいたい)  夏樹は久志の股間に顔を埋めたまま心の底からそう思った。  映画やドラマならここで場面が変わって、実は夏樹の妄想でした、めでたしめでたしなのだが、不幸なことにこれは現実だ。  いくら夏樹が認めたくなくても、鼻先には下着を着けていない久志の久志がものすごい存在感で密着している。 (――目を開けなければ大丈夫。サッと離れて、すぐにベッドに潜り込もう――もう、それしかない!) 「夏樹?」  様子のおかしい夏樹に久志が声をかけるが、集中モードに入っている夏樹に久志の声は聞こえていない。  失敗は許されない。  夏樹は頭の中で一連の動きをシミュレーションすると、閉じたままの目をさらに固く瞑った。 (――――よし!)  久志の腿を掴む夏樹の手に力が入る。  えい! と心の中で掛け声をかけて夏樹は久志の股間から顔を離した。 「久志さん、松本くんの具合はいかがです…………か?」 「――芹澤、さん?」  ここにいないはずの芹澤の声に集中が途切れてしまった夏樹は、固く瞑っていた目を開いてしまった。  以前、偶然目にしてしまった巨大な久志のモノ越しに、芹澤がこれ以上ないくらいに目を見開いて久志と夏樹のことを凝視している。 「ひっ、久志さんっ! あなた、松本くんに何をさせているんですかっ!」  夏樹は芹澤が感情をむき出しにしている所を初めて見た。  芹澤さんでもこんな顔するんだ、と夏樹が呆然としてる間にも芹澤は夏樹たちの方へと駆け寄り、素早い動きで夏樹のことをベッドへ押し込んだ。 「なんだ芹澤、早かったな」 「早かったなじゃありません! 私が松本くんの状態が心配で早めに来なかったら、あなた、この子に何をさせるつもりだったんですか!」 「いや、夏樹の方から迫ってきたんだが」 「――は?」 「嘘じゃないぞ」  久志の言葉を聞いた芹澤がベッドの方へ振り向いた。  夏樹は布団の中に潜っていたが、布団を通して芹澤の刺さるような視線を感じた。 「松本くん、久志さんの言っていることは本当ですか?」 「芹澤、あまり夏樹のことを責めるな」 「久志さん、あなたは早く下着を着てください――松本くん?」  夏樹はそろそろと布団の中から顔を出した。  
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