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山路にとって芹澤の言うことは絶対である。
様子のおかしな久志のことは心配だが、芹澤が放っておけと言うなら、山路もこれ以上久志に構ったりはしない。
こそこそと芹澤から耳打ちされながら、山路が久志の方へと視線を移すと、じっと二人の様子を見ている久志と目が合った。
「……君たちはいいな、仲が良くて。昨夜も一晩中、一緒に過ごしたんだろう?」
久志がぽつりとこぼした言葉に秘書課内の空気が変わる。
「ちょ、専務、変に誤解を招くような言い方は……」
「あれ? 何で俺と芹澤さんが夕べ一緒だったことを専務が知ってるんですか?」
「山路くんっ」
「今朝、芹澤から聞いたんだよ。朝までずっとだったんだろう? 疲れなかった?」
「いえ、そんなっ! 俺、芹澤さんのためなら何でもできます! さすがに明け方は芹澤さんもお疲れのようでしたので、俺の部屋に寄って少し休みましたし」
ね、芹澤さん、と山路は芹澤の顔を見ながら首を傾げた。
「いいなあ……芹澤、愛されてるね。今の私には君たちがとても羨ましいよ」
「そんな、愛してるとか大げさです。でも、俺にとって芹澤さんは何者にも変えられない存在ですっ!」
気のせいか秘書課内の雰囲気が浮き足立ち、何人かの秘書課のお姉さま方が机の下で携帯を操作している。
「――だそうだよ、芹澤」
「芹澤さん、心から尊敬してます! 大好きですっ!」
「――――っ」
晴れ晴れとした表情で芹澤さん大好きと言い放つ山路の横で、芹澤は頭を抱え、久志は大きなため息をついた。
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