24 とまどい

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「…………」 「久志さん?」  夏樹から頭を撫でられた久志が、ベッドの上で正座をしたままの格好で固まっている。 「久志さん、どうしたんですか?」 「――夏樹」 「はい」 「君……今、何て言った……?」 「え? ちょ、あの……うわっ」  怖いくらいに真剣な表情をした久志に、夏樹は背中からベッドへ押し倒された。 「夏樹」 「えっ、何っ!?」 「今、何て言った?」 「――今、ですか? えっと……久志さん、どうしたんですか……?」  顔の横で両手首をシーツに縫い付けられた格好の白うさぎが首を傾げる。 「もうちょっと前!」  久志に言われて数分前の記憶をたどっていた夏樹の顔が、突然ぱあっと赤く染まった。 「夏樹、お願いだ。もう一度、言って欲しい」 「…………」 「夏樹」 「…………久志さん……好き」 「夏樹っ!」  真っ赤になりながら呟く夏樹の言葉を聞くなり、感極まったように久志が夏樹の体を抱きしめた。 「夏樹……やっと言ってくれた! 私もだ、私も君のことが好きだ! 大好きだ! ……愛してる」  小柄な体を抱きしめたまま、久志が好きだ愛してると夏樹の耳元で繰り返し告げる。  普段から挨拶のように言われ続けていた言葉だが、初めて自分の気持ちを久志に告げた後に聞かされるのは、とんでもなく恥ずかしい。 「夏樹……君が私を見つめる、こぼれそうなくらいに大きな瞳や、まるで私に食べてくださいと言っているかのような可愛らしい唇、思わずキスしたくなる愛らしい鼻に食べ頃の桃のような頬……全てが愛しいよ……どうすればいいんだ……君のことが愛しすぎて、どうすればいいのかわからないよ」 「ちょ、何言ってるんですかっ! もう黙ってくださいっ」  熱にうかされたように繰り出される久志の言葉に、夏樹の顔がさらに真っ赤になる。  これ以上は聞いていられないと、ぎゅうぎゅう抱きしめてくる腕から逃れるため夏樹は必死で身を捩った。  身を捩る夏樹のことを逃さないとでもいうかのように、抱きしめる久志の腕に力が入る。 「夏樹……夏樹、私の愛しい人」 「ひさ……っ、あのっ、くる……しい……」  このままでは落ちてしまう。  夏樹は「ギブアップ」と、久志の背中を叩いた。
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