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ベッドの枕元に置かれたコンビニの白いビニール袋。袋の中にはコーヒーゼリーが六個入っている。
一日一個食べるのを夏樹はとても楽しみにしており、そのことは久志ももちろん知っていた。
「夏樹、君の食べる分がひとつ減ってしまうが、構わないかな?」
夏樹の顔を覗き込みながら久志が尋ねる。
だが、前も後ろもどうしようもない状態になってしまっている夏樹に、自分の食べる分のコーヒーゼリーが少なくなるとか、今聞かれても答える余裕などもちろんない。
「……仕方がないな。使った分は後でまた買ってあげるから、それでいいだろう?」
荒い息で顔を上気させながら、夏樹はただ久志を見上げることしかできない。そんな夏樹の反応を一体どう解釈したのか、久志は後で新しいコーヒーゼリーを買うからと言って、枕元にあるコンビニの袋に手を伸ばした。
「ひとつで足りそうだな」
久志が袋の中からコーヒーゼリーをひとつだけ取り出し、シート状になったふたを剥がす。
「なるほど、ミルクは表面にかけてあるのか」
プラスチックの容器を傾けて妙なところに感心しつつ、久志はその中に人差し指を突っ込んだ。
半分蕩けた意識の下で、久志さんもコーヒーゼリーが食べたかったのかなどと、ちょっと的外なことを考えていた夏樹も、久志が指でコーヒーゼリーを混ぜ始めたのを見ると、目を見開いた。
「久志さん……何して……?」
真剣な顔をした久志が指でコーヒーゼリーを混ぜている。
グチャグチャという、聞きようによってはとてもいやらしく聞こえる音とともに、甘い匂いが部屋中に広がる。
「久志さん」
「うん? 待ちきれなくなったのか? ――――そろそろいいかな。夏樹、ちょっと後ろを向いてごらん」
「――えっ、何!?」
久志はおもむろに夏樹の体をひょいとうつ伏せにして、細い腰を持ち上げた。
顔はシーツにつけたまま、腰だけを高く上げるという格好だ。
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