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コンビニのレジカウンターの奥でアルバイト店員の相川葉月(あいかわはづき)は、常連客であるスーツ姿の二人連れの男らの様子を眺めていた。
ひとりは長身のイケメン、もうひとりはえらく童顔の可愛らしい少年だ。
少年とは言っても、スーツを着ていることから会社勤めだろう。学生ではないはずだ。
(さっちゃんに似てるかな……いや、さっちゃんの方が百倍くらい可愛いな)
実は葉月には、童顔の会社員に負けず劣らず年相応に見えない兄、皐月(さつき)がいる。
葉月は、通りすがりの人が思わず道を開けてしまうほど強面の自分とは対照的に、思いきりキュートな容貌の皐月のことをこよなく愛していた。
「いらっしゃいませ」
長身の男がレジカウンターにコーヒーゼリーを二つ置いた。
最初は童顔の男の方が毎日ひとつ、コーヒーゼリーを買いに来ていたのだが、ここ最近は長身の男と二人でやって来るようになった。
どうやら二人とも、ここのコンビニ限定のこのコーヒーゼリーが好きなようだ。
「うーん……」
「久志さん?」
「あ、君。相川くん? ちょっと会計を待ってもらえるか?」
胸につけている名札で葉月の名前を確認したのだろう、長身の男はちょっと待ってくれと言い置くと、再びデザートコーナーの棚へと歩いて行った。
レジ前に童顔の男がひとり立っている。
(身長もさっちゃんと同じくらいかな。うん、でもやっぱり、さっちゃんの方が可愛いな)
葉月がさりげなく右腕を上げて童顔の男の身長を測ってみる。
ちょうど葉月の肩辺りに男の頭のてっぺんがくる。ということは、やはり皐月と同じくらいの身長だ。
「すみません」
「――えっ?」
密かに身長を測っていたことがバレたのだろうか。葉月は慌てて上げていた腕を下ろした。
「お忙しいのに、お待たせしてしまって」
童顔の男が申し訳なさそうに葉月のことを見上げている。
(――わ、さっちゃんも可愛いけど、この人も結構……)
皐月と童顔の男、二人が並ぶ光景はかなりの癒しになるなあ、などと葉月がこっそり考えていた所、ダンと大きな音を立ててレジカウンターにコーヒーゼリーが二つ置かれた。
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