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「君は私の所に来る」
「だ、だからそれはイヤだって……」
「ちゃんと最後まで聞きなさい。あともうひとつ、私がここに来て君と一緒に生活する」
「――は?」
「まあ、この場合は君が部屋で一人にならないようにするために、私と行動を共にしてもらうことになるけれども」
この男は何を言っているんだと夏樹が目の前の男の顔を見ると、彼は夏樹の手を自分の手でやんわりと包み込んだまま、眼鏡の奥の瞳を細めた。
今ここで答えなさいという無言のプレッシャーを感じる。
「どちらでもいい、夏樹が選んで」
正直どちらも遠慮したい。だが遠慮したところで、久志のことだ。今度は夏樹のマンション周りに大袈裟なくらいの人数の警備員を配置するかもしれない。
これ以上人さまに迷惑はかけられない。
「……わかりました。俺がこ……久志さんの所に行きます」
夏樹の決死の決断に、久志が良くできましたとばかりにニコリと笑みを浮かべた。
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