クリスマスにはXが潜んでいる

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「イスカリオテのユダはね」 「うん」 「キリストを銀貨三十枚で売ってしまった。裏切ってしまった。彼を非難するものは多々ある。けれど、逆に考えてみればユダがいなければキリストは死んで再び蘇り、神になることはなかったんだ。ユダがキリストを十字架送りにしたからこそ、キリストは神になれた」 「ええ、そう?だってキリストはユダに「生まれなかった方が、その者のためによかった」とまで言われてるんだよ?結構嫌われてない?」 「そうだろうね。ユダはキリストを売った罪悪感のために死を選ぶ運命にあった。でも、それをキリストが見抜いていたとしたなら?ユダという犠牲を前提に己が神になることを知っていたとするなら?ユダの生はキリストに捧げられるためだけの命。それならいっそ、産まれてこないほうが良かった。そういう意味だったんじゃないかな」 彼女は僕の仮説にうーんと一考したあと、 「そういう仮説もいいかもね。うん、なんだか新鮮」 「あはは、そうだろう?一瞬の思いつきにしては、そこそこの出来じゃないかな。裏切りはある種の美徳なんだよ。だからこそ人は裏切りを好む。浮気とかね」 「……してないよね?」
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