クリスマスにはXが潜んでいる

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疑り深い目で見てくるのだけれど、酔っているせいか眼力がなくて可愛らしいので、ついからかうように笑ってしまった。 「ふふっ、さてどうかなぁ。こう見えて僕、結構モテるんだよ?」 「よく言うわねぇ。積極性のない草食系男子はもてない運命なのよ」 「今の僕には君がいるじゃあないか」 「世の中の常識を裏切る展開よねぇ。我ながら、本当にそう思うわ。私をフったら、多分一生後悔するわよ?」 「言ってくれるね。そんな裏切りも美しい。どんな形であろうとね。例えばほら、こんな風に」 僕は一欠片の勇気を振り絞って、振り絞って、振り絞って。 「ーーさん。僕はこういうのがはっきりいって苦手だしもの凄く緊張するし、二度は言いません。YesかNoだけで答えてください。僕と結婚してください」 見栄を張ったダイヤの指輪が据え付けられた赤い箱を開けて、頭を思いっきり下げた。 こういう時に真っ正面から相手を見れないのが我ながら女々しい。彼女に告白した時もそうだった。ああ、僕は成長してないんだなぁ 彼女がYesかNoか、どちらの答えを返すのか。それは分からない。分からないけれど、ただ一つ確信していることはある。 「ああ、なるほど。これは確かに……予想を裏切られた気分」 やっぱり、YesともNoとも返さなかった。 でも、二言目は要らない。彼女の癖は分かっている。返事はこれからくる。 「ーー私でよければ、喜んで」 下げた頭を上げた時、彼女が浮かべていた泣きそうなほどの満面の笑みを、僕は一生忘れることはないだろう。 X'day。 それはもはや起こることが確定しているが、いつ起こるか予想不能な出来事。 けれど寄り添う二人が将来を誓うには、この聖夜だけは例外なのかもしれない。 ーークリスマスにはXが潜んでいる。 END
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