変わるもの 変わらないもの

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「髪、伸ばしたんだな」 「うん」  先生の手が私の髪を手櫛で梳いていくのが気持ちよくて目を伏せた。髪を伸ばしてるのには特に意味は無かった。ただ惰性で伸ばしていただけの髪は、今はもう腰に届きそうな長さになっていた。 「染めないのか?」 「うん」  カラーリングしたことは一度もなかった。大学では、地味にしていれば男の人の目に止まらなかったから。なるべく地味に、大人しく。かわいい格好なんてしないように。世間の女の子と真逆の努力をした。 「無理してると色々しんどいぞ」  最近ずいぶん慣れたけれど、大学の頃は、とにかく人との接点を絶っていないと怖かったのだ。その結果、地味になってしまっただけだった。こういうのも無理って言うのかな。 「お前、髪も服ももうちょい違う方好きだろ?」  なんで、バレてるのかな。6年ぶりに会ったのに。何が好きとか話してもいないのに。一緒に買い物に行ったりもしてないのに。それなのに先生は怖い位に全部見透かしてくる。 「拗ねるなよ」 「拗ねてないもん」  こんな返事をすること自体が拗ねてるようなものなのに。でも、どうしても昔の私と比べられてる気がしてしまう。
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