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それにしても、と新島は手紙と翠を見比べる。
「体育祭ねぇ。
お前、体育祭の時目立つことでもしたのか?」
手紙の中には、『体育祭で見かけてから気になってました』という一文があった。
「えー…リレー出たって言ったじゃん!」
翠が拗ねてしまうのは、せっかくクラス対抗リレーに出て全校で2位だったのに、 新島が全く見てもいなかったからだ。
「…そーいやそんなこと言ってたな」
「覚えててよぅ…先々週なのに」
「しらねーよ。俺、閉会式の準備してたし」
リレーなんて見てねーよ、と返してくる新島の声音は、心底どうでもいいと言いたげな空気をまとっている。新島は自分の興味の無いことにはとことん興味が無いらしい。
「それより、早く行けよ。待ってんだろ?
これ持ってっていいから」
これ、とキャビネットの下段から出されたそれはドアストッパーで。要はオートロックである非常口に挟んで、すぐに戻ってこれるようにしていいぞ、と言う事だとは翠にも判った。それでも尚煮えきらずに呻いている翠に、新島は呆れたように息をつく。
「5分したらコンビニ行ってやる」
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