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切れた電話を片手に、私は目を閉じた。
言っちゃった。聞きたいことあるって言っちゃったし、呼び出しちゃった。もう、後戻りできない。
襲ってくる不安にぎゅっと自分の身体を抱きしめた。先生から「今から行く」とメールが届くまでの20分ほどの時間が2時間にも3時間にも感じられた。
ロータリーに滑り込んできた、先生の車がウインカーを上げて停まる。助手席のドアを開ける手が、かすかに震えていた。助手席に座るのは、二回目。昔は座らせてもらえなかったその場所に座ると、先生の手がくしゃっと頭をなでた。
「会社でなんかあったのか?」
何かと言うほどのことは無かったから、首を横に振る。
「飯は?」
「まだ」
「じゃ、先に飯食うか」
聞きたいことがあるといって呼び出したのに、そんなことには一切触れずに、車は走り出した。
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