繋がる気持ち

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 訪れたのは、沈黙だった。ちらりと先生を盗み見たけれど、対向車もなくて薄暗い車の中で先生の表情は良く判らない。 「してたら、お前どーすんの?」  その言葉に、心臓から一気に血が引いていったように胸の奥が冷えた。どうする……って。どうするって、そんなの……そんなの、どうもできるわけない。不倫なんて事……、どんなに先生が好きでも出来るわけ無い。奥さんから奪うなんて、できっこない。  あぁ、先生ともう、会えないんだ。そう思っただけで、じわりと世界が滲んでいく。 「してたら……して、たら……」  唇が震えて、続きの言葉を上手く紡ぐ事すら出来なかった。  結婚してるかもしれない。彼女が居るかもしれない。覚悟はしていたつもりだった。それでも、いざその言葉が先生の口から告げられたら、私の覚悟なんてあっさりと崩れてしまった。先生は昔と変わらずに接してくれて、教師と生徒だった頃よりもずっと近くにいるような気がして、覚悟をしているつもりで……全く出来ていなかったんだと思い知る。 「あ、おい。泣くなよ」  泣くな、そう言って先生の指が頬に零れ落ちた涙をそっと拭う。運転中なのに、そう思って顔を上げると、赤信号だった。涙を拭ってくれた先生の手が、私の頬を優しくなでる。 「してない」 「…ほへ?」  私の口から漏れたちょっと間抜けな声に、先生が呆れたように笑う。
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