変わるもの 変わらないもの

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 ベッドの上にぺたんと座ってぽうっと呆けていた。  昨夜、何回キスしたんだろ。  あの後、車の中で何度も唇を重ねた。キスなんて最後にしたのは高校生の頃で、それも強引で怖いキスしか私の記憶には無かったのに、昨夜した先生とのキスは優しくて思い出しただけで頬が熱くなる。枕元においてあった携帯が鳴っているのに気が付いて、私は慌てて電話に出た。 「おはよう」  聞こえてきた声は先生の声。単なる朝の挨拶のはずなのに、あまりにも新鮮に響いて、そう言えば先生と朝に話をしたことが無かったことに気が付いた。私と先生は通常の学校生活での接点が本当に無かった。会うのは私が物理実験準備室に会いに行ったときだけで、いつも放課後で、朝行くことはなかったから。 「翠?」 「あ、お、おはよう、ございます」  ぎこちない挨拶を返した私を先生が電話の向こうでクスクス笑う。 「お前、寝てたのか? 今から迎え行くけどいい?」 「ちゃんと起きてたっ」  先生に、昨夜の事を思い出してぼーっとしてたなんて言えない。そう思いながらも指先で軽く唇に触れてみる。  電話を切ってから、改めて自分の姿を鏡に映してみる。デニムにオフホワイトのVネックのセーター。そんなに変な格好していないよね? と鏡に映した自分を見下ろして、シンプルすぎる首元にそっと手を添わせる。何かアクセサリーでもあれば良いのだろうけど、高校を卒業して以来がっつりと引きこもり生活をした私には、そんな洒落たものは無い。
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