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切れた電話を見つめて、道又先輩と付き合うことになったのを伝えた時、美咲と圭ちゃんもこんな風に喜んでくれたのを思い出していた。
美咲と圭ちゃんに、会いたい。ふっと浮かんできた二人の笑顔。記憶の中では、ずっと一緒にいるのに、私は2人が今何をしているのかすら知らない。その寂しさにため息をついた。
手にしていた携帯が鳴って、見ると先生の名前。電話を取りながら、窓の外を伺うと家の外に先生の車が停まっていた。
「すぐ行くっ」
そう答えて、階段を駆け下りた。
先生の車のドアを開けると「おはよう」と電話でも言われたその言葉がもう一度告げられる。さっきも電話でこうして目の前の先生に改めて言われると頬が火照る。昨夜、何度となく重ねた唇をどうしても意識してしまう。
「お前、ちゃんと起きてる?」
「お、起きてるっ」
ボーっとしてるけど? と怪訝な顔をされた。
「行きたいとこ有るなら行くけど、どっかある? 」
デートなんてしたことのない私は行きたいところも思い付かなくて首を横に振った。
「んじゃ、家帰るかな。外食続きだったしな」
家? と心臓が跳ねた。先生の家? 付き合った次の日にお家? 回らない頭のまま頷くと、音もなく車が走り出す。先生の運転は丁寧なのに、私は、ジェットコースターにでも乗ってるかのように心臓がバクバク鳴っていた。
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