2953人が本棚に入れています
本棚に追加
先生だよ。今一緒に居るのは新島先生。高校時代には馬鹿とかアホとか散々言って、二言目には早く帰れって言っていた新島先生。熱くなる頬に軽く手を当てて自分に言い聞かせるけれど、一度意識してしまったら熱は引いてくれなくて、心臓もドキドキと鳴りやまなくなってしまう。
「どした?こっちおいで」
もう一度呼ばれて、手を引かれるとあっという間に先生の腕のなかに閉じ込められた。緊張していたはずなのに、先生の声や抱き締めてくれる胸の温かさや、腕の力強さに緊張がほどけていく。
「せんせ……」
先生の腕のなかから見上げると、頬を撫でられて唇を塞がれた。昨夜もだったけれど、先生はゆっくり私が怖がらないように優しくキスをしてくれる。6年も会わなかったんだから言いたいことも、聞きたいことも、山のようにあるはずなのに、私も先生も無言だった。だけど、なにも言わなくても、伝わってくる。
包み込む様に抱き締めてくれる腕と優しく触れる口付けが、先生がまだ一度も言葉にしてくれていない「好き」も「会いたかった」も何もかも全部伝えてくれている気がした。
最初のコメントを投稿しよう!