2953人が本棚に入れています
本棚に追加
お昼ご飯を忘れるほどに、キスに没頭した私達が、さすがにお腹すいたねと早めの夕飯の相談を始めたのは、四時過ぎ頃だった。「有り合わせでよければ」と先生に言われた私は、あまりにも意外できょとんとして聞き返した。
「え?先生料理するの?」
「一人暮らし長いからな。お前より上手いかもな?」
「……そ、そんな下手じゃないもん!やればできるもん!」
余裕の表情でさらっと馬鹿にされたから言い返したけれど、正直自信はなかった。だって、私はずっと実家暮らしで、特に料理を手伝ったりもしていない。そんな私の強がりを見透かした先生がニヤリと笑う。
「へぇ?じゃぁ何か作ってくれんの?」
こんな挑発に乗ったのが間違いだった。
-5分後。私は先生に絆創膏を貼って貰っていた。
「お前、開始1分は酷すぎるだろ」
そんなの私だってそう思ってるもん。喉をならして笑う先生は、ちょっと拗ねてる私の人差し指に消毒液を垂らす。
「おー、スッパリやったな。血止まりにくそう」
それ以前に凄い痛くて本気で泣きたい、と心の中で泣き言を漏らす。先生の家の包丁は、今まで使ったどれよりも切れ味が良かった。
「あんなに切れる包丁初めて」
「あぁ、そっか。俺慣れてるから忘れてた。言っとけば良かったな」
言われてても切ったと思う、とこれまた心の中で言い返した。
「あと大人しくしてな。様子見て貼り替えろよ」
最初のコメントを投稿しよう!