変わるもの 変わらないもの

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「先生は、昔の私のほうが好き?」  私の言葉に、髪を梳いていた先生の手が止まる。 「馬鹿か、お前」 「ちょっと、馬鹿ってなに馬鹿って!!」  思わず振り返ると、呆れた顔の先生と眼が合った。 「馬鹿な事聞くから馬鹿っつっただけだ。なんで馬鹿っていわれたか本気で判ってないなら大馬鹿だ」 「だって、絶対……昔の方が可愛かったもん」 「……大馬鹿だな、お前」  呆れた表情の先生を見ていられなくて俯いた。だけど、昔の私のほうが今の私よりずっとずっと可愛かったのは間違いない。  寝癖が治らなくて遅刻しそうになったり、スカートが短いって朝から生活指導の先生に捕まったり、フルーツの良い香りのするリップを使って、髪だって今よりちゃんとブローしたり、アクセサリーをつけていた。あの頃の私は、なんだかんだでちゃんと女の子だった。  でも、今の私は、女の子とはいえない気がする。起きたら適当に後ろで髪を縛るだけ。寝癖が気になったら、まとめ髪にしてしまう。社会人として最低限だと思うファンデーションをさっと塗るだけ。似たようなシャツとパンツを前の日と同じにならない程度にローテーションするだけ。
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