アイノコトバ

17/27
前へ
/267ページ
次へ
 お風呂を上がった時には、藍からもらった自分の好きな服を着たい気持ちも、先生に抱きしめてもらった安心感も、何もかも全部失ってしまって私の心は不安の塊になっていた。 「髪、乾かしてやるからこっち来な」  あまり働かない頭のまま、先生の近くに行くと、先生の脚の間に座らされた。 「のぼせたか?」  あまりにもぼんやりしていたからか、先生に顔をのぞき込まれて慌てて首を横に振った。先生の手がくしゃくしゃと私の頭を撫でて、そのままドライヤーの音が響き始める。先生の長い指が、心地良く髪を梳いていくのが心地よくて目を伏せると、お風呂で考えていた事の続きがぐるぐると頭の中で回り出す。  「ねぇ、せんせ。大丈夫って……どういうことかな…」  ぽつりと零れた微かな声は、ドライヤーの音にかき消されて先生までは届かない。  先生の事が好き。先生の傍に居たい。だけど、先輩にされた行為を思い出すだけで、大丈夫と言う気持ちはあっさりと恐怖に押しつぶされてしまう。
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2948人が本棚に入れています
本棚に追加