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私の首元に頭を預けていた先生は、ため息にも近い吐息をついて、抱きしめていた私を引き離すようにして立ち上がった。
「寝るぞ」
その声を聞いた私に襲い掛かるのは、背中に触れていた心地良い温もりを失った、寂しい気持ち。先生は隣に居るのに、一人ぼっちで置いてきぼりにされたような気がした。あまりの寂しさに涙があふれそうになる。
「翠?」
先生に呼ばれたけど、顔を上げたら泣いてるのがばれると思うと顔を上げる事すら出来なかった。
「どうした?」
膝をついて私を覗き込んできた先生の両手で頬を包み込まれた。
「何で泣いてんの?」
そう言った先生の表情は辛そうで、尚更申し訳なくなる。先生は凄く私に気を使ってくれてる。わかってる。わかってるの。私がちゃんと考えられてないだけだって、わかってる。
こつんと先生の額が私の額にぶつかる。それだけ近くにいるはずなのに、先生の表情は涙で滲んで何もわからなかった。
「翠、お前さ、俺と居るの辛い?」
先生の言葉に背筋が凍って、頑張って堪えようとしていた涙が溢れ出した。
「……んで?」
辛くなんてない。先生に会いたくて会いたくて堪らなくて。やっと会えて、もっともっと抱きしめて欲しいのに。一緒に居るのが辛いなんて、考えたこともなかった。
「……泣かせてばっかだから。俺と居ると、忘れたい事も思い出させてんじゃないかって、お前が泣くたびに、不安になる」
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