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「おねだりしてごらん?」
大層な事をお願いするわけじゃない筈なのに、おねだりなんて言い方に更に頬が火照る。
「翠、耳まで紅いぞ」
クスクス笑って先生は私の耳朶をゆっくりと甘噛みして、吐息の混じった低い声で耳元をくすぐる。
「そもそもやらしーことおねだりしろなんて言ってない筈だけど?」
「先生のその言い方がやらしい!!」
もうっと思わず肩越しに振り返って言い返した私に、先生は尚もクスクス笑って、すっといつもの表情に戻る。
「もっかい、言ってやろうか?」
そう言った涼しい顔は、ついさっきまでおねだりだとか言って私の耳朶に悪戯していた人とは思えなくて、その切り替えの早さについて行けない私はたじたじになってしまう。
「あ、えと……その。もう一回、言ってください」
「はい」
先生は身体を起こして、私のことも引き起こした。当たり前だけど露わになった上半身に、ちょっと色気の無い悲鳴を上げて、慌てて布団を胸元まで引き上げて抱きしめた私を先生は小さく笑って、私の頬を掌でゆっくり撫でた。
昨夜も言われた事だから、これから言われる事はわかってる。だから尚更、心臓がドキドキと鳴り出す。あまりにも緊張していて先生が口を開くのまでもがスローモーションに見えるような気がした。
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