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「渡辺ー、連れてきたよ」
「おう、さんきゅ」
振り返ったその男子生徒は、日焼けした肌と屈託のない笑顔が印象的な人だった。
「んじゃ、私はこれで失礼しまーす」
帰ろうとした美咲の腕を翠は慌てて掴んだ。
「ちょっと、美咲?!」
「だって、渡辺が翠と話したいって言うから」
詫びれた様子も無く言う美咲に翠は口を尖らせた。
「そんな怒る事無いじゃない。だって翠今フリーでしょ?」
フリーだとかそういう問題じゃない。翠は美咲に道又とのことを一切話していなかったことを悔やんだ。だが、恥ずかしげも無く人に話せるようなことでもないし、道又の事は翠の中でもまだ全く消化出来ていなかった。
答えられない翠の言葉を肯定と取ったのか美咲はにっこりと笑う。
「あ、もうちょい紹介していこうか。ウチの部活の渡辺大輔ね。いいやつだからちょっと友達になってみなって」
ね?と気楽に美咲は翠の肩をたたいて、軽快にその場を後にした。
…ちょ…っ美咲…!!!! しかもそれ、特に紹介にもなってないし。
声にならない声は美咲に届くわけもなく、大輔と二人残されて、翠はため息をついた。
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