落ちてくる空

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 その次の日も翠は大輔の部活が終わるまで、新島に文句を言われながらも物理実験準備室で過ごして時間を潰していた。  翠は結局四月に部活をやめてしまっていたけれど、それを親にも、友達にも言っていない。親友だと思っている友達にも、部活をやめたことを言い出せずにいた。だから、大輔は翠をバドミントン部だと思っていて、部活が終わったら一緒に帰ろうと声をかけてくれる。翠が、わざわざ時間を潰しているなんてことは、考えても居ないだろう。  翠が部活をやめた事を知っているのは、部活のメンバーを除けば新島だけだった。  あの事があった二月はとてもじゃないけれぼ部活に行ける気持ちになれなくて、三月はそのまま休部にしてもらっていた。  四月、久しぶりに部活をやっている中体育館に行ったものの、足が震えて中に入る事すら出来なかった。具合が悪いと話して保健室に行ったものの、保健室には丁度ケガをした野球部の男子生徒が居て、とてもじゃないけれど気持ちが休まるどころではなかった。結局泣きながらたどり着いたのは、新島のいる物理実験準備室だったのだ。
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