落ちてくる空

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 新島はぐずぐずと泣く翠の頭をくしゃくしゃと撫でて「やめっちまえよ」とあっさりと言った。  部活をやめてから翠は、放課後は物理実験準備室に文字通り入り浸るようになった。宿題を片付けたり、授業で判らなかったところを新島に聞いたり。時にはちょっとお昼寝したりしていると、帰る時間は部活をやっていたころと殆ど変わらない。多分親にも、他の友達にもばれていないと思っていた。  一人で帰るときは、運動部が終わる時間帯よりも少し早めに学校を出ていたから大丈夫だったけれど、大輔と一緒に帰るとなると部活の友達と会う可能性も格段に高くなる。男子と二人なだけでも酷く不安に感じるのに加えて、部活の友達に会ってしまう事への不安で、大輔と帰る下校時間は翠にとってとても大きな不安と緊張の時間になっていた。 「翠……そのさ、焦るつもりは無いんだけどさ、その……」  普段は快活に話す大輔が、珍しく言いよどむのを聞きながら翠は大輔を見上げた。 「もし、嫌じゃなかったら……ちゃんと付き合ってくれないかな」  いつかは言われるんじゃないかと思っていたけれど、その言葉はいざ言われると、想像よりも遥かに重く感じられた。  たとえるなら、空が落ちてくるような。  世界が全て終わってしまうような、そんな気がした。
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