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それがどうした、視線でそう言われた気がして翠は溜め息をついた。
「お前なぁ、俺にそれを言ってどうするんだよ」
「どうって…」
だって他に相談出来る相手が居ないんだもんと翠は口を尖らせた。
大輔と引き合わせた美咲はもちろん、他の友達に相談したところで気楽に付き合っちゃえば~?と言われるだけなのは目に見えている。翠が誰とも付き合いたくない理由をちゃんと知っているのがこの新島だけなんだから、翠には新島に愚痴る以外の選択肢は存在しないのだ。
「何度も言ってるだろ、たまたま前のヤツが最低だっただけだって」
翠は非難がましい眼差しで、呆れたように言う新島を見上げた。
「だいたいお前、男嫌とか言うくせに俺は平気じゃねぇか」
「それはぁ」
翠は不満げに視線を床に投げて小声で言った。
「そんなのあたしが知りたいもん」
どうして新島なら男の人でも平気なのか。そればかりは当の翠もよくわかっていない。大輔とは手を繋ぐのも嫌だし、父親とも二人きりになるのはあれ以来避けている。だけど、新島となら二人きりで居ても平気だし、頭をなでられても怖いとは思わない。
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