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「あーぁ」
「くつろいでんじゃねぇ」
伸びをした翠の頭に、ベシッと降ってきたのは物理の問題集。その薄っぺらい問題集は授業で使っているものではなく、業者からもらったサンプルで、座ったままでは届かない翠の頭を叩く為だけに机の上に置いてあるらしい。授業で使っている問題集はコレの5倍の厚さがある。翠は新島が提出された問題集の山をチェックしているのを一目見ただけで嫌になった。
「だってぇ、ここ日影だから教室より涼しいしぃ。猫ちゃん来てからジュースも冷たいしぃ」
超快適~と翠は伸びをした。猫型冷温庫は、翠の中ですっかり猫ちゃんという呼び名で定着していた。
「お前、ここを何だと思ってる」
「なにって、新島せんせの部屋」
他になんだと言うのだろう。その位、ここは新島の私物感が強かったし、新島自身も自覚はあるらしく返答につまる。
「お前、まだ部活辞めたこと言ってないのか?」
「……うん」
翠は頷いた。部活を辞めたことを、まだ親にも友達にも言っていない。もともとバドミントン部で日焼けすることは無かったから、今のところそこまで怪しまれてはいないはずだ。
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