2949人が本棚に入れています
本棚に追加
「だったら付きあっちまえ。で、無理だったらさっさと別れてこい」
「……そんなのズルくない?」
さらっと言われて翠は思わず眉をしかめた。
「別にズルかないだろ。無理じゃなかったらそのまま付き合ってりゃいい」
「……それが大人ぁ?」
「一番良いのは無理なら無理ってさっさと言ってやることだろ」
何言ってんだお前、とでも言うように新島が言い放った言葉が心にぐっさりと刺さる。翠は溜め息をついて、しゃがみこんで猫の冷蔵庫を撫でた。
「いいなー、猫ちゃんは。ここにずっと居るだけで良くて」
「そいつ、5年近く物置に放置されてたやつだぞ。正直、電源入って感動したわ」
「……」
むぅ、と翠は唸り声を漏らした。
「保留してんのに学校帰んのは一緒とか、中途半端に期待させてる方がよっぽどズルいだろ」
そんなの判ってる…、そう思いながら翠は抱き締めた膝に顔を埋めた。
「ま、夏休みまでにははっきりしてやりな」
伸びてきた大きな手がくしゃくしゃと頭を撫でてくれた。
夏休みまでは、あと3日しかない。だからこそ、すべてを放棄したいのだ。
最初のコメントを投稿しよう!