落ちてくる空

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「だったら付きあっちまえ。で、無理だったらさっさと別れてこい」 「……そんなのズルくない?」  さらっと言われて翠は思わず眉をしかめた。 「別にズルかないだろ。無理じゃなかったらそのまま付き合ってりゃいい」 「……それが大人ぁ?」 「一番良いのは無理なら無理ってさっさと言ってやることだろ」  何言ってんだお前、とでも言うように新島が言い放った言葉が心にぐっさりと刺さる。翠は溜め息をついて、しゃがみこんで猫の冷蔵庫を撫でた。 「いいなー、猫ちゃんは。ここにずっと居るだけで良くて」 「そいつ、5年近く物置に放置されてたやつだぞ。正直、電源入って感動したわ」 「……」  むぅ、と翠は唸り声を漏らした。 「保留してんのに学校帰んのは一緒とか、中途半端に期待させてる方がよっぽどズルいだろ」  そんなの判ってる…、そう思いながら翠は抱き締めた膝に顔を埋めた。 「ま、夏休みまでにははっきりしてやりな」  伸びてきた大きな手がくしゃくしゃと頭を撫でてくれた。  夏休みまでは、あと3日しかない。だからこそ、すべてを放棄したいのだ。
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