落ちてくる空

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 翌日、翠はHRが終わるなり物理実験準備室に駆け込んでいた。珍しくHR直後に居た新島はノックもなくバタンッとものすごい勢いで開いたドアに顔をしかめたが、今の所、珍獣でも見るかのように翠を眺めている。 「言えなかったぁ!!!」  昼休みに突然教室に大輔がやってきた。教室を連れ出されはしたものの、美咲をはじめ友達達は、廊下で話している翠と大輔を興味津々で見ているのを、背後からひしひしと感じる。  そんな状況で、翠は大輔に無理だと伝える事ができなかった。大輔が男の人だと思うだけで、萎縮して言葉が出なくなってしまう。 『無理なら無理って言ってくれていいんだ』  そう言われたにも関わらず、翠は無理だと言えなかった。言えなかったという事は、付き合う……ことになるのだろう。  翠にも判っていた。だからどうしたらいいのかわからなくて、ここに逃げてきてしまった。  暴れる翠を一頻り眺めて、大体状況に察しがついたのか、新島は普通に提出物らしき問題集の山に視線を落とす。完全無視を決め込まれるのもまた居心地が悪くて、じとっと新島に視線を送ると、チラリと目線を寄越した新島が呆れたように息をついた。
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