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一度教室の方に階段を上って、翠はぐるっと一度北校舎から南校舎に廻って改めて昇降口に向かった。物理実験室があるのは北校舎。バドミントン部が部活をしている小体育館があるのは南校舎。
大輔と帰るようになってから部活帰りだと思わせるために、わざわざ南校舎側から昇降口に向かうのが習慣になっていた。
「翠」
昇降口前で手を振ってくれた大輔の元に歩み寄ると、「帰ろうか」とはにかむように笑って手を握られてゾワッと肌が粟立った。
ヤバい。ホントに……ホントに無理!!!!
ゴツゴツとした男らしい指が尚更翠の恐怖心を掻き立てた。だけど、そんなの口に出せない。言った後の大輔の反応が怖い。怖くて怖くて溜まらない。
翠はその恐怖心が顔に出ないように必死に顔に笑顔を作ったがその笑顔はどこか引きつっていた。
「そんな、緊張しなくても」
翠の引きつった笑顔を緊張と取ったのか、大輔は翠を見て表情を崩す。
「なんかさ、翠どっか余所余所しいっていうか……
そんな感じがしてたから、無理って言われるかなーって、俺勝手に思ってて」
ぎゅっと繋いでいた手に力が篭るのを感じて、翠は背中を駆け抜けた悪寒に身体を震わせた。
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