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「6組の峰岸か…行ってこいよ」
言葉と共に肩越しに廊下と繋がる引き戸の方を振り返って、男は続けた。
「すぐそこだろ?」
『放課後、化学実験室の裏で待っています』と手紙の中で指定された場所は、すぐそこ。
ここは化学実験室と廊下を挟んで向かい合っている物理実験室-に付随している物理実験準備室。普段は鍵をかけていて開かないようにしてある廊下と繋がる引き戸を開ければ、そこは化学実験室の目の前なのだ。
そして、翠と話しているこの男は、この物理実験準備室で仕事をしていることの多い物理教師の新島だった。
「やだよぉ…無理ぃ」
完全に面白がっている様子の新島に、翠は恨めしい視線を投げる。
「俺に言わずに本人に言ってこいって。そこの非常口から出て、無理っつって帰ってくるだけだろ?
大丈夫、こいつ変なやつじゃねーから。つるんでるやつらもマトモ」
翠が全く知らない差出人を新島は知っているらしい。恐らく教科担任なのだろう。新島は簡単そうに言うけれど、翠には全く簡単じゃない。簡単じゃないから、ここで実験台に突っ伏しているのだ。
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