色を失っていく世界

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-  仕事を終えて家に帰る途中、立て続けにスマホがラインメッセージの到着を告げる。ラインを開くと、にぎやかに会話を交わしているのは会社の同期のグループライン。  『金曜日、飲みに行こう』と言い出していたのは、菊池君だった。もともと大阪支社に配属になっていたのもあって、美味しい店はどこだとか、そんな会話が繰り広げられている。私は同期のグループラインに登録はしているものの、普段はほとんど会話に参加しない。同期の飲み会の連絡だとかそういうのを受け取るために登録しているだけと言ってもいい位。  家に帰ってご飯を食べて、更にお風呂にまで入ってからスマホを見ると、まだまだ会話が続いていて、半ば感心しながらグループチャットを開く。ざっと流し読みした限り、行ける人だけでご飯を食べに行くらしい。みんな、元気だなぁ……と他人事のように考えながらスマホを机に置くと、目に着いたのは高校の卒業アルバムだった。  ぱらりとページをめくると、文化祭の写真が並んでいた。その中の一枚に、圭ちゃんとクラスの女の子と3人でおそろいのエプロンをして楽しそうに笑っている私が居て、思わず手を止めていた。
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