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「……ホンマにもう……」
ガーッと、再び閉じられた扉を尚も睨みつつ、雨京は深いため息をついた。
「い"…… てぇぇ~~っ……」
管理部室の太い柱にもたれ、半分しゃがみこんで左の尻を押さえ、痛みに悶絶しながら
赤音は困ったように眉を下げ、自分を指さした。
「な…… なんだよ? 雨京~~……。俺、なんかした?」
雨京はその美しい眉をひそめながらも、拗ねたように、頬を染めつつ、何にもわかってない赤音を軽く睨んでみせた。
「“無意識”なんは……よう解ってますけどな…」
「――いっくら卒業したゆうても、未だカリスマ生徒会長『獅子上 赤音』は、一般生徒の憧れの的なんどすから……もっと、ちゃんと自覚してくれへんと困ります!」
「……ホンマに…、あんな笑顔(かお)……簡単に魅せたりしはって……」
再び深いため息をつく雨京に、赤音は目を丸くして頬を染めた。
そんな子供のように純粋な、赤音の表情を見て、雨京は恥ずかし気に、またせつな気に横目で赤音を見て小さく呟いた。
「赤音くん……。 もう……“独り身”やないんどすえ?」
―――僕ら……一緒に暮らしてるんやから……。
卒業して同じマンションで暮らしている二人は、恋人以上、最早だった。
鈍い赤音にも、やっと雨京の怒った理由が理解できた。
その瞬間
赤音はいきなり雨京を、ぎゅっ…と強く抱きしめたのである。
慌てたのは、雨京の方だ。
「あ……っ、赤音くん!? ちょっ……!!?」
雨京の肩ごしに、静かな赤音の声が囁かれた。
「すまねぇ……雨京…」
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