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「珍しい」
「どこもこれしかやってないんだ」
男が意識をテレビへと戻す。そこには、誰がどう見ても科学者と言わんばかりの男が映っていた。
『えー、これだけ巨大なものを、なぜ今になるまで、発見しえなかったのか。私共にも、残念ながら、分かりません。
ただ、知識を持たない人でも、えー、こいつがぶつかれば地球がひとたまりもないことは、お分かりになると思います』
そう言った科学者は、画面の外から模型を出した。
それは、地球の半分ほどの大きさの丸い物が、地球と並ぶだけの物だった。
『えー、半径約三千キロメートルのこの隕石ですが、外をご覧になれば、空に、もう見えるでしょう』
男はコーヒーを机に置いて、庭に出た。
そして、空を仰ぐ。
その目には、確かに、真っ赤に燃える物体が映った。
黒煙を出しながら、米粒ほどのそれはずんずんと大きくなっていく。
男が住む家は、夢に見たマイホームだ。
あくせく働いて、ちまちま貯めてきた財産を使い、ようやく建てた、マイホーム。
妻はお腹が大きくなり、明日から入院する。
そんな折にこれである。
男は思った。
ーーああ、人生とはこんなものか。
と。
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