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『諦めるには、早い』
そんな声が聞こえた。
ーーもう幻聴が。
などと思った矢先、妻の悲鳴が聞こえた。
はっと我に帰った男が家の中に戻ると、テレビには恐ろしいものが映っていた。
それは言った。
『恐らく、力とは我らを救うものだ。貶めるものにあらず。
ともすれば、私は今、無二の英雄たり得るものである、と自負している』
『お、お前、何者だ!』
『……私は、英雄たらんとするが、しかし、有名というのは遠慮したい。 強いて言うなれば、先の"能力者狩り"を逃れた者、であるということだ』
直後、ブツっとテレビは消え、以後何も映さなくなった。
男とその妻は世界の終わりが来るまで、抱きしめあった。
だが、その終わりは、来ない。
決して。
なぜなら、隕石は無くなったのだから。
テレビに出ていた、いなくなったはずの、能力者。
全身を黒い鎧で包み、目の部分は真っ赤に揺れ、頭には二本の大きな角が生えていた。
互いを抱き合い、震える夫婦は後に知ることとなった。
その"鬼"が、巨大な隕石を"拳で粉砕した"ことを。
世界を、地球を救ったことを。
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