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追う事を止めた田嶋は、自らに当たった物と男の死体を検分し始めた。
足元に落ちていた物を拾うと、三猿の根付け。
細工は細かいが、持ち主を特定できるような特徴が見当たらない。
やむを得ず、男の死体検分に移る。
死因はハッキリしていた。
盆の窪(頭蓋骨と頸骨の付け根)に小さい札が刺さっていたのである。
引き抜いてみるとそれは、花札だった。
九月を表す菊の札、【酒】と呼ばれる札である。
少し離れた所に落ちていた札も菊のカス札に間違いない。
この札を見て、ふとある事を思い付いた田嶋は自身番(現在の交番)に死体を見つけて検分を終えた旨を届け出た後に奉行所の例繰方詰め所へと足を向けた。
二
夕七ツ半(午後5時頃)。
奉行所の例繰方の書類書庫に田嶋は居た。
ここ数ヶ月の殺しに花札が使われていないか調べる為だ。
はたして、それはあった。
少なくとも先月の八月(北町奉行所の月番)は薄野(ボウズ)、六月は牡丹(蝶)と判明する。
「ふざけやがって……」
苦笑いしながら書類を調べる田嶋。
あれこれ例繰方の残した書類を調べているうちに、暮六ツの鐘が突かれる。
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