~第一話~ 行く先は、一重の幕の子守唄

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 金釘流の丸っこい女文字に目を通し火鉢にくべると、おもむろに立ち上がり着流しへ二刀を差し込んだ。 「どうする? 表の定法では裁けないぜ?」 「裏なら、裁けると?」  聞き返す田嶋に、意味深な笑みで答える曲淵だった。     六  目隠しをされた田嶋が連れて来られたのは、灯りの消された深川某所。  そう、あの芸事指南所だった。  曲淵が握っているであろう刀の下げ緒に従い敷居をまたぐ。 「遅かったな」  二階の階段踊場らしい箇所から、声が聞こえてきた。 「申し訳ありません、仰せの通りに彼を引き込むのに手間取りまして」 「まあいい、今夜から彼にも手伝って貰おう」  一人蚊帳の外だった田嶋は、訳が判らないながらも曲淵に続き二階に上がる。  二階に上がると行灯が赤々と灯っているが、田嶋には当然ながら見えない。  曲淵に倣って室内に入る。 「もう、目隠しを取っても構わぬぞ」  やや年かさらしい男に言われ、目隠しを取ると一組の男女が座っていた。 『!?』  田嶋が驚くのも無理はない。  昼過ぎに逢った壮年の与力にそっくりだったのだ。  その驚きの気配を察したか、男が口を開く。
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