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『明日暇か?なら迎えに行くから暖かくして出かけるぞ』
『あぁ、絶対ズボン履いてこい』
『どこってそれは行ってからのお楽しみだ』
『着いたらメールする』
突然タケからきた電話に、ともは首を傾げた。
出かけるってどこに?
聞いてもお楽しみだと言われれば、それだけで楽しみになり、ともはわかったと頷いた。
電話を切った後、付け加えるように、“思った以上に暖かく着て来い”と言われれば、ともも春に衣替えしたクローゼットを確認しないと心配になった。
「思った以上にって、本当に思った以上?……スキニーの中にタイツとか履いた方がいいのかな」
ぼんやり独り言をつぶやきつつ、この間片づけたばかりの冬物の棚を引き出した。
「タケ、おはよう」
マンション下、壁に寄りかかるようにしていたタケを見つけ駆け寄るとも。
そんな彼女に、タケは僅かに目を見開いてその頭をぽんっと撫でた。
「随分かわったな」
「へへっ、キイちゃんとこでやってもらってきたんだ」
「そうか……女子大生って感じがするな」
「でしょー?それより、タケ。私本当に思った以上に着てきたから、ちょっと暑いんだけど」
「あぁ、それでいい。思った以上に寒いぞ」
そう言うと、寄りかかった壁から体を起こし歩いて行く。
その先にあったのは。
「バイク」
「あぁ」
「しかも、すっごい大きい」
「大型だからな」
「えーっ」
「400のもあるんだが、このでかい方がカッコいいだろ」
タケはほら、とヘルメットをともに渡すと自分も身につける。
渡されたソレをまじまじと見たともはゆっくりを顔をあげた。
「……コレ、ピンク」
「あ?そうだな」
「これ、タケのだよね?」
「当たり前だろ。お前を乗せようと思ってるんだから」
いや。
とも的には、タケがピンクのヘルメットを持ってると言う事が気になったのだが。
タケ的にはそこはすでに通り過ぎ、ともを乗せるのだからソレを持ってて当たり前だという返事になったらしい。
ともがヘルメットをかぶると、タケは顎の止め具を調節してやった。
「よし」
言うが否や、ひょいとともを持ち上げバイクに座らせる。
「いいか、しっかりつかまっとけよ」
言い方なのか、ともはやや引き攣りつつも、タケに腕をまわししっかりつかまった。
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