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「おい、ケン。ちゃっかり俺のとか言ってんじゃねぇ」
「チッ」
「ほらほらー!ともちゃん挟んで何やってんの!?」
キイが向かいの席から両手を伸ばして仲裁に入ると、ともは漸くふっと息を漏らして微笑んだ。
「わっ!ともちゃんやっと笑ってくれた!」
「やっとって、ふふっ、私ずっと笑ってたでしょ?」
「いや、えっと……うん、笑ってたよ!で、笑ったついでに今日はとことん遊んで帰ろうよ!ね?」
キイはともが褒めた自慢の笑顔を作ると、さらに輪をかけて笑って見せた。
「まずはー、ここを出てから駅ビルの文房具屋さんでしょー?それから、隣のビルのショップめぐってー、疲れたらアイス食べてー、ゲーセン寄って太鼓叩いてー」
指折り数えながら一生懸命考える。
「ありがとう」
「ともちゃん」
一気に目を潤ませたキイは、唇を噛んで我慢した。
ソレにふっと笑ったタケは腕を組んだまま、口を開く。
「夕飯はアキラさんの所に行くぞ」
「あ、俺、久々だわー」
「なに、そのちょくちょく出るアキラさんっつーのは飯屋でもやってんのか?」
「いや、カフェって言った方がいいんじゃねぇの?な、タケチャン?」
「だからお前、たまにチャンづけで呼ぶなよ。気持ち悪ぃ」
「いいじゃねぇの。なー?ともチャン?」
「うん、イイと思う、タケちゃん」
顔をひきつらせながら、視線を蒼に移し。
「中学ん時から世話んなってんだ。もともと俺らの方の地区にあった不良高校のトップだった人なんだが、カフェやってんだ」
へぇ、と声を漏らす蒼とキイと一緒に、ともはそんな人だったとは思えないと驚いた。
そうして、キイの立てたプラン通り一日遊び倒し、皆でともを送るのにのんびり歩いた。
「あれ、電話……」
バイブにしてたのか音は聞こえなかったが、ともがケータイを取り出す。
そして慌てて電話に出た。
「も、もしもし!?蓮?」
「蓮!?」
ともの声に、男どもは思い切り振りむき固まる。
「うん、みんなが気を使って遊んでくれたの……うん、今送ってくれてる」
少し嬉しそうにそう告げるとものケータイを、蒼は奪い。
「てめぇ!午前中あれだけ大げさに別れて行ったんだから、簡単に連絡してくんじゃねぇ!!」
【にがくてしょっぱい】
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