第29章 嫉妬とヤキモチ

2/5
2691人が本棚に入れています
本棚に追加
/158ページ
手を繋いだままずっと歩いてた。 人が、なんて呟いただけで、俺の手を握る手がぎゅっと力を込めて、絶対に離さないって断言してくれる。 これってヤキモチ? そう尋ねたら、違うって、ヤキモチじゃなくて、嫉妬って言われて、怒られてるのに、不謹慎にもきゅんとしてしまった。 宗太さんに相談してたんだ。 自分自身の進路も全然考えてなくて、でも幸太はそういうしっかり考えてて、正直、置いていかれてる気がして、寂しかったんだ。 なんでも話聞いてくれるから、つい、甘えて頼っちゃった。 幸太が海外に行ちゃうってこと、隠してるから。進路のこと話してくれないから。 切なくて、きゅんとして、痛くて、甘くて、胸の中がごちゃごちゃだったけど、幸太の手が力強く俺を捕まえていてくれるから、何も考えず、そのまま全部を話した。 ぽつり、ぽつり って話してたら、幸太の家に着いてた。 「チャリは?」 「カゴ、買ってから」 「あ、じゃあ、カゴ」 「その前にこっち」 第一印象の幸太みたい。 少し無口で、切れ長の黒い瞳がクールでカッコいい。 驚いている俺をかまわずに、ずっと繋いだままだった手で強引に家の中へと招く。 「あの……」 まだ、幸太の親は帰って来ていない。誰の気配もしない家。 「ごめん、晴」 「え?」 何? 何に謝ってんの? 怒ってるのに謝るって、もしかして、俺、呆れられた? ビビりつつ顔を上げた瞬間―― 「んっ……」 齧り付くようにキスされた。 今まで、幸太とけっこうな回数、キスしたと思うけど、そのどれとも違う。濃厚で深いキスに失神しそう。
/158ページ

最初のコメントを投稿しよう!