第1章 壁ドンとクールイケメン

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今日は髪型失敗した。もとからフワフワの猫っ毛だから、癖なんて付き放題だけど、今回は超ハードなワックスも全然太刀打ちできないくらい。 こういうのって、朝からテンション下がるけど 今朝はそうじゃない。 「壁ドン……最高ぉ……」 つい、にやけそうになるのをマフラーの中に顔を埋めて隠しておく。 壁にドンする。 カッコいいイケメンが、可愛いイケメンを。 「グフフ」 マフラーの中でつい気味の悪い笑い声が零れてしまった。 寝癖がつくくらいに熟睡した夢の中、そんなイケメンだけで構成された「壁ドン」な夢を、今も必死に脳内で再生している。 はぁ、とても美味しい夢を見てしまった。 「晴(せい)君!」 ピョン と跳ねるように視界に飛び込んで来たのは 「……」 同じクラスの永崎さんだ。うちのクラストップの可愛い女の子グループに属していて、その中でも田原さんって子と、双璧をなす可愛い子。 「おはよ」 「おはよ。今日、このあとどうするの?」 もうすでに彼女の脳内は、学校後の予定のことだけ。 今日は終業式で、帰りのチャイムが鳴った瞬間から、冬休みに突入だ。 「ねぇねぇ、ファミレスの割引券あるから、それで皆でご飯食べてぇ、んで、そのあとはカラオケ? でも、カラオケはこの前行ったっけ。あ、でも、晴君、そん時いなかったよ! 私、晴君の歌、超聞きたい! 普段、どんなの聞いてるの?」 アニソンです。 とは答えずに、高校生必須のアーティストの名前を並べる。 「へぇ、私もぉ! 一緒だね?」 一緒じゃないよ。それは一般向けにとりあえず押さえているだけであって ベビロテで聞いてんのは アニソンとBLCDです。 昨日はそんなイケメンボイスが甘く喘いで、甘く囁くCDを聞きながら寝たので、とても素敵な「壁ドン」を夢の中で見ちゃいました。 「晴君の歌、聞きたぁい」 「えぇ? じゃ、今度行こっか」 「今日は?」 「あぁ、ごめん」 こんな可愛い女子と仲良さげに、今の流行に敏感な男子を装っておりますが。 俺 超隠れ腐男子です。で、今日は好きな漫画家さんのサイン会があるので無理です。 って、またピョコピョコ跳ねる永崎さんに脳内だけで返事をしておいた。
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