第1章

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バーテンダーの男性がカウンターでシェイカーをふっている。 ジャズ演奏のBGMが客の会話の妨げにならないように流れている。 今日は11月の水曜日だ。 体がしずむソファーに腰掛けて話す。 『久々だね。こんなバーにくるの』 『いつもは、チェーン居酒屋ばっかりだもんね』 フロアにはテーブル席が30卓くらいあるだろうか。 テーブルとテーブルの間がたっぷり取られており、 となりのテーブル席には会話は聞こえない程度の間隔があり、 居心地の良い空間を演出している。 そんな雰囲気のいいバーで4人集う。 『飲みすぎじゃないの?かなえ』と吉村志乃 が若林かなえを心配して言う。 『大丈夫。それより、この中の4人って誰も彼氏いないじゃん。 一番先に彼氏つくる競争しない?』 『やめようよ、そんなの』と私が諌めるように言うと、 『オール4の女は消極的過ぎだよ』とかなえがしつこいくらいに言う。 この「オール4の女」というのは、私がかなり昔につきあっていた男性に言われた言葉だ。 もうこのネタは引っ張らないでほしい。 『私もいやだな』と児玉典子も続く。 典子はこの中でいちばんOLという言葉が似合う女性だ。 流行に疎い私のファッション辞典の役割を担っている。
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