第1章

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『そういうきっかけがないと彼氏って作れないかもね』 と志乃は乗り気の様子だ。 志乃は5年前に離婚しており、 最近まで「もう男はコリゴリ」と言っていたので、 彼女なりに時間経過の中でいろいろあったのだろうが、 この発言にはびっくりした。 お酒を飲みすぎたようだが、全く顔には出ていないかなえは、 『玲子は自信ないんでしょ?』と私に向かって言うので、 『そんなことないよ』 と少しムキになってしまう。 『じゃあ、3対1で決まりね』とかなえは言い、 私は売られた勝負に巻き込まれてしまった。 『何かける?』と乗り気の志乃が言う。 かなえが『勝った人が決めるっていうのは?』と言うので、 『それでいいよ』と間髪いれず私が有無を言わさず言い切った。 いくらかなえでも、とんでもない内容にはしないと思ったので、 具体的に「賭けの戦利品」を決めないことがベストな選択だと思ったのだ。 というのも「ノンストップナンパ」と言って、手ごろな相手がみつかるまで、 その場にいる者でナンパを続けるという企画を考えた女なので、 こういった件に関しては心許せないのだ。 ちなみに、この時は幸運にも1組目でナンパ成功したので、 私までは順番が回ってこなかったが。 『出会いの場がないよ』と巻き込まれた典子が言う。 『そういうものはつくるんだよ。あっち見てみて』 とかなえが目線を入り口付近に向けた。 すると3人はかなえの目線の方に顔を向けた。 『きっかけ作りに行ってくるよ』とかなえが席を立った。 かなえの後姿を見送ると、お手洗いのほうに歩いて行った。 『本当にやるの?』と面倒そうに典子が言う。 『かなえも本気でやろうと思ってないよ』と志乃が答える。 遠くからかなえの声が聞こえる。 相変わらず大きい声だ。 『そうなんですか。残念』 お手洗いのついでにナンパに行っていたかなえが戻ってきた。 どちらがついでかは分からないが。 『もう帰っちゃうんだって』 『ていよく振られたんだよ』と私が残念そうに言う。
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