第1章

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かなえがおかわりの飲み物を頼んだ。 『飲みっぷりいいねぇ』とアキラが負けずに 『僕も同じもの』と言いジンベースの飲み物を注文した。 ふたりは何杯か注文しては、飲み物を交換し合っている。 男性の中でいちばん飲む人はアキラとのことだった。 『この4人でよく飲みに行くんですか?』 と私はあたりさわりないことを聞いた。 『同世代の独身が少ないんでね』とアキラは誰よりも早く言い、 智之が永瀬と顔を見合わせていた。 肩ぐらいの長さの横髪を耳にかけながら、志乃が聞く。 『会社には、かわいい女の子はいないんですか?』 『受付やってる総務部の子はかわいいね。 でも、総務部の子を口説くとすぐ社内に知れ渡っちゃうんだよね』 とアキラが引きつりぎみに言う。 『どうして知れ渡っちゃうんですか』 と典子が不思議そうに聞く。 『総務の子が5人くらいローテーションで、 2名体制の受付やってて、 お客さんの来ない時間はヒマだから、 そういう話してるらしいよ』とアキラが説明した。 『その中のひとりが、いろんな部署にしゃべりまくるんだよ』 とユウキが補足した。 『この中の誰かが、言いふらされたことあったりして』 とゴシップ好きの典子がからかうように言う。 『まさか、そんな噂知ってて口説けるかよ』 とアキラが手を横にないないと振りながら言った。
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