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「ところで、お前……名前は?」
アリアが、屋敷に向かう途中に訊いてきた。
そうだ、まずはそこだろう。肝心なところを、驚きのあまり抜かしていた。
「京壱。青波京壱。」
名乗ると数秒後、いきなり呼び捨てで名を呼ばれた。
「京壱。」
「うん?」
僕は、見下ろすようにアリアを見た。ゆうに僕よりも20㎝は身長が小さいだろう。
「これから、色んなやつらと会うから異端士について説明しようと思う。」
アリアの話を簡潔にまとめると、こうだった。
まず、異端士とは人間とは異なる異能力を持つ者たちのことで、生まれながらにして異端士かどうかは決まっている。産まれた子供が異端士の可能性は、7500万人に一人の確率らしい。そして、異端士にも種類があり、戦闘に特化しているものもいれば、氷を操ったり、異常な分析力を持っていたりするものなど、本当に多種多様である。
アリアは話終えると、ひとつ溜め息を吐いた。
信じられないことはない。元より人間の脳は10%程しか使われていないというじゃないか。だったら生まれながらにして異能力を開花させて彼女のいう異端士になる奴がいても全く不思議ではない。
「人間ではないと言っても、異端士という称号を持っている人間と考えてもらって構わない。生活する分には何ら支障はないからな。」
そう言った後、アリアの足が止まった。
前方を確認した僕は、目前に広がる広大な屋敷に息を飲んだ。
一時は栄えた上流貴族の洋館を思わせる、4階建ての屋敷。
門の向こうには白い石造りの噴水、庭園には真紅の薔薇が咲き誇っている。
こんな森の奥に、こんな屋敷があったのか。現実離れし過ぎて、もはや何も言えない。
門のところに、「童話魔術探偵アリア 事件受け付けます」と書かれた板がかけてあった。
「童話……?魔術……?」
「そうだ、私の異能力は【結合】と【透析】。仲間の異能力を結合し、一部私の異能力として用いることができる。後は、人間の心を読むことができる。―――――だが、事件解決にこれは使えない。心のなかに隠そうとしている思いは、どんな名探偵でも暴くことは出来ない。……例え、私のような異端士、でも。」
アリアが物憂げに屋敷を眺めながら小さく言う。
「じゃあ、入ってくれ。」
そう言って、アリアは門を開けた。
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