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屋敷に入ると、真っ先にロビーが広がった。高級そうな家具が立ち並ぶ広いロビーにアリアが足を踏み入れると、椅子に座った少年がこちらを見た。
――――――それと同時に、ヘッドフォンをつけた一人の少女が凄まじい勢いでアリアに駆け寄ってきた。
「姉様~ッ!!ヤバイッス、カイがティーカップを割っ……!」
そしてそのまま白い壁に突進した。
「割ったのか?」
アリアが問うと、長身の少女は額を擦りながら、「割ったんスよ!姉様の使ってたカップを手から滑らせて!」と叫んだ。
すると椅子に座って洋書を読んでいたオッド・アイの少年が呆れたように少女に言った。
「ミコト、あれは昔来ていた貴族のスープ・マグで、アリアさんの物ではないよ。」
少女―――――ミコトは顔を真っ赤にして反抗する。
「そんな筈ないッスよ!」
「いや、割れた瞬間の音の波、破片の形状などからして劣化が見られた。恐らく2、30年は前に作られたものだよ。アリアさんのティーカップは去年買ったと記憶しているけど。……それにアリアさんはそんな骨董品は使わないよ。」
アリアは溜め息を吐くと、ミコトと少年―――――ルトに問う。
「ナツメとカイは何処だ?」
「ナツメは今朝から部屋に籠りっきり、カイは多分台所で夕食を作ってるよ。」
ルトが答えると、ミコトは僕を見て、訊いた。
「新入りさんッスか?」
返答に困った。これからアリアが僕をどうするつもりなのか分からないのだ。助けを求めるようにアリアを見ると、アリアは頷いて言った。
「異端士を街で見つけたから、連れてきた。本人がここに居たがれば居させれば良いだろう。」
アリアがそう言うと、ルトが僕の前に歩み出た。
「僕はルト。異能力は【分析】。能力柄分析にまつわることを言うことが多いと思うけど……そこのところは宜しく。分からないことがあったら聞いてね。」
ルトが右手を差し出す。その白く細い女のような手を軽く握り、握手を交わすと次にミコトが前に出た。
「私はミコトッス!異能力は【戦闘】ッス。あとのナツメとカイ、呼んでくるッス!」
そう言うと、ミコトは階段を駆け登って行った。途中、派手にこける音がしたが、誰も気にしなかった。
「ルト、こいつの異能力が何か分析してくれないか。」
アリアがそう言うと、ルトは僕に向き直って目をつぶった。もう一度目を開いたときには、菫色の左目に深紫の十字の線が現れていた。
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