奇妙な依頼。

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「私と1曲踊って下さいませんか?」 優男は、セザン=ヨルダザークと名乗りました。 つい、私もお酒が回っていて、しかも優男だったものですから、私は二つ返事でセザンさんと踊りました。 踊り終わったセザンさんは、こう言いました。 「私は貴女がとても気に入りました。どうかこれからも度々会ってくれないですか?」と。 ここからは少し長くなるので重要なところだけまとめていきますね。 セザンさんと私は、とても親しい仲になり、お付き合いをすることになりました。私は彼を愛していましたし、不満もありませんでした。 ところが、ある日事態は急変しました。 セザンさんのお屋敷にお邪魔した時です。寝室が自慢なんだ、と言って私を寝室に招き入れました。 「ベッドに座っていて。」 セザンさんはそう言いました。すると突如、部屋の明かりが消え、真っ暗になったのです。セザンさんが消したのか、それとも停電なのかは分かりませんでした。動揺する私の腕に、冷たくて尖ったものが当たった気がします。その直後、腕に激痛が走りました。血の匂いが部屋に立ち込めました。しかも、まるで血を吸われているような感覚さえしてきます。その時、私は、目が慣れてきたのでしょう。煌々と光る赤い双眸を見てしまいました。その切れ長な瞳は、セザンさんのものでした。 その後、大声を上げて私はその部屋から飛び出しました。腕から滴る血も構わず、馬車を呼び、がたがたと震えながら私の家に帰りました。恐ろしくてたまりませんでした。今でも、こうしてお話ししていることが彼に知られてしまったらと考えると、全身に鳥肌が立ってしまうくらいですわ。 「……それで、何をお望みでしょうか?」 婦人が話し終わり、溜め息をつくと、ルトが訊いた。 「セザンさんが何者だったのかを調べるのと……出来れば、もう二度と会うことの無いようにしていただけるかしら。」 ルトとアリアが目を合わせ、頷いた。 「畏まりました。必ずやお役に立てるよう此方も尽くさせていただきます。」 ルトが、持ち前の笑顔で言った。 婦人が屋敷を出ると、ルトはさも愉しそうに笑顔を浮かべた。 「なにかあったんですか?」 ルトを慕っているらしきカイが、ルトに訊く。ルトは残ったクッキーにジャムを浸けて食べながら、微笑を崩さず答えた。
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