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重ね重ね言うが君子蘭都は人助けを趣味とする人物である。
「はいよ、もうはぐれるんじゃないぞー」蘭都は六歳くらいの少女に言う。
「ありがとう、お兄さん!」と手を振って母親と一緒に帰っていった。
彼は幼女と母親が見えなくなるまで見送った。
「はぁー、今何時だろーって六時!?そろそろ帰んなくちゃなー」いやーあの子泣いちゃった時はどうしようかと思ったな、と独り言をつぶやきながら駅を目指す。ちなみにこの君子蘭都、先ほどの少女の他に老女に道を教え、
ドミノ倒しになっている自転車をきちんと直し、重そうな荷物を持った中年の男を手助けをするといった感じで人助けをしていたのであった。
すっかり空がオレンジ色に染まっていてそんな中、駅の手前を蘭都は歩いていた。
するとビルとビルの間、ちょうど路地裏になっているところで「オイ、オイ、オイ、テメエはさっさと金出せばいいんだよ!さもなかったらお前の顔、原型留めねーようにしてやろーか?アア?」などという物騒な脅しが聞こえてきた。
蘭都は路地裏を見て立ち止まる。
どうやら、長身のヤンキーが華奢で頭のよさそうなメガネ少年に金を脅し取ろうとしている図である。
(これ関わるととてつもなく面倒になる気がする…)と思惑とは裏腹に蘭都はハァとため息をつき、路地裏に入っていく。
普通の人なら見て見ぬふりをするのが通常の行動である。それもそのはず、人は自ら面倒事に巻き込まれようとはしない。
しかしこの少年の気質(もはや病気)は違っていた。ヤンキーから少年を助けたいという気持ちの方が遥かに逃げたい心を超えているのであった。
「まぁまぁまぁ君たちここは平和にね。ヤンキー君、カツアゲはよくないんじゃあないかな?」人助け(お節介?)少年はヤンキーに物怖じせず淡々と割って入った。
「何だお前、このメガネのダチかよ」
「悪いけど、このメガネ君とは初対面だよ!」と蘭都はヤンキーの手首を捻りみぞおちにエルボーを繰り出す。
ゴスッ重たい不意打ちがヤンキーを襲う。あまりにも意外な一撃だったので怯んでしまう。
「テメエ!卑怯だぞ!」
「確かにいきなり、一撃したのは悪いと思ってる。でもね卑怯なのは君なんだよ、抵抗する気のないのをいいことに無理やりお金を脅し取ろうなんてさ。だから止めよう、こんなことしてもいいこと無いからさ。」と蘭都はヤンキーを冷静に説得している。
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