第4話 モアイとの出会い

2/34
前へ
/34ページ
次へ
マリカはラブホテル街を歩いていた。 男と女の香水の混じったにおいが漂っている空間を歩く。   援助交際を続けていた。 多額のお金が貰える……。 悪びれもなく思ったりした。   デリヘル、ラブビームからメールがきた。 「コモリトヨカズ、30歳、紺のスーツ、青いネクタイ、3時間ラブラブコース、18時、下山公園」 お金のため、マリカは歩き続ける。 下山公園に着いた。   マリカはキョロキョロする。 紺のスーツ、青いネクタイの男が今回の客である。   「いた!」   痩せてはいないが、太ってもいない。モアイみたいな顔をしていた。ハンサムではない。   きっと、もてないんだろうなあー。 マリカは思った。   モアイは星のない闇の空を見上げていた。からだは小刻みに震えていた。緊張しているのだろうか。   マリカは近づく。声を掛けた。 「あんたがコモリさん?」   モアイはマリカの顔をじっと見つめている。が、反応がない。 「私、ラブビームから派遣されてきた者なんですけどー。紺のスーツ、青のネクタイ、そう連絡されてきたんですけどー」 「……はい……、僕がコモリトヨカズです……」 声が気の弱い幼児のように小さかった。 「あんた、大丈夫? 体、震えてるよ?」 トヨカズは地蔵のようにかたまっていた。 「どうするー、いきなりホテル行くー、それとも食事にするー」 「……食事で……」 モアイの声は震えている。 「あんた、私の分もおごってねー」 「……はい……」 ラッキー。   マリカは踊りたい気持になった。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加