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マリカはラブホテル街を歩いていた。
男と女の香水の混じったにおいが漂っている空間を歩く。
援助交際を続けていた。
多額のお金が貰える……。
悪びれもなく思ったりした。
デリヘル、ラブビームからメールがきた。
「コモリトヨカズ、30歳、紺のスーツ、青いネクタイ、3時間ラブラブコース、18時、下山公園」
お金のため、マリカは歩き続ける。
下山公園に着いた。
マリカはキョロキョロする。
紺のスーツ、青いネクタイの男が今回の客である。
「いた!」
痩せてはいないが、太ってもいない。モアイみたいな顔をしていた。ハンサムではない。
きっと、もてないんだろうなあー。
マリカは思った。
モアイは星のない闇の空を見上げていた。からだは小刻みに震えていた。緊張しているのだろうか。
マリカは近づく。声を掛けた。
「あんたがコモリさん?」
モアイはマリカの顔をじっと見つめている。が、反応がない。
「私、ラブビームから派遣されてきた者なんですけどー。紺のスーツ、青のネクタイ、そう連絡されてきたんですけどー」
「……はい……、僕がコモリトヨカズです……」
声が気の弱い幼児のように小さかった。
「あんた、大丈夫? 体、震えてるよ?」
トヨカズは地蔵のようにかたまっていた。
「どうするー、いきなりホテル行くー、それとも食事にするー」
「……食事で……」
モアイの声は震えている。
「あんた、私の分もおごってねー」
「……はい……」
ラッキー。
マリカは踊りたい気持になった。
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