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鍋からはグツグツと煮立つ音がしている。
菜箸を持つ音成の姿があまりにも新鮮で見惚れていると、顔を上げた音成と目が合った。
ふわりと微笑まれて顔が真っ赤に染まる。
この男の隙のない完璧な美しさにはいつまでも馴れない。
「珍しいですね、音成さんがお料理ですか?」
荷物を置くと、腕捲くりをする。
「あぁ、料理…そうだね、料理といえば料理かな」
「…?」
何だか煮え切らない音成の答えに首を傾げる。
「手伝いましょうか?」
斗羽の言葉に音成はまた微笑む。
「それは助かる」
音成が作る料理ってどんなものなんだろうか?
音成の事だからきっと料理も洗練された完璧でセンスの光るメニューに違いない。
一般家庭の料理しか知らない自分に手伝いが務まるかドキドキしながらキッチンへ入る。
音成に手招きされてIHの上に置かれた鍋を覗いた斗羽は絶句した。
鍋の中でグツグツと煮込まれていたのは…
「あ…あの、こ…これ……なんですか?」
「あぁ、麻縄だよ」
音成の答えに斗羽は飛びあがりそうになった。
「な…な…なぜ、縄を煮込まれていらっ…いらっしゃるのですか…?
??」
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